“リハビリテーション”と言えば、スポーツ選手が怪我から復帰するために行うものであったり、脳血管疾患などによって麻痺した手や足を動かすためにやるもの、などとイメージされることが多いかと思います。急性心筋梗塞や心不全急性増悪などを来たし、入院となった場合などの急性期の場合は、それに近いイメージになります。投薬やカテーテル治療・手術などの必要・適切な治療によって全身状態・心臓のコンディションの回復を図りつつ、その回復状態にあわせて活動レベルなどを拡大させ、退院・自宅療養・社会復帰が出来るようにサポートすることが心臓リハビリテーションの主たる目的です。また同時に、患者さんの状態が許せば、例えば禁煙や減塩指導など、心臓疾患を増悪させる因子に対する生活指導や、臨床心理士による心理サポート介入などを行うことも含まれます。
めでたく病状が改善し退院された患者さんも、それで治療は終わりではありません。
いつも患者さんにお話していることして、例えば、『狭心症や心筋梗塞でカテーテル治療が終わっても、それで治療が終わりではありません、むしろ治療の始まりだと思ってください』、ということがあります。
考えてみてください。
カテーテル治療というのは、動脈硬化で狭くなった血管を風船やステントを使って広げただけの局所治療です。
そもそも血管を狭くした根本的な原因である動脈硬化の進展を予防しなければ、遠からずまた動脈硬化が進行し、狭心症や心筋梗塞が再発してしまうリスクが高くなることは、十分に想像できるかと思います。
ですので、心臓疾患の再発予防のためには、その疾患の原因となっている生活習慣の管理・改善が大変重要になってきます。
ただ、大学病院でもクリニックでも、皆さんご存知のようにたくさんの患者さんにご来院いただいているが故に、その反面、お1人に割ける診療時間・診察時間が大変限られてしまい、結果、生活習慣の管理・改善に必要なお話をしっかりお聞きし、相談にのり、適切なアドバイスを行うことが難しくなっている、という現状があり、これがわれわれ医療スタッフの大きなジレンマとなっております。
われわれは、みなみ野ハートクリニックの時代から、入院中の急性期の心臓リハビリテーションだけではなく、この、治療した後の再発予防の重要性に着目し、心臓リハビリテーションの専門外来を設け、完全予約制で生活習慣病のチェックや心機能のチェック、虚血や動脈硬化の評価、運動耐容能の評価などを行い、適切な運動処方や生活指導を行っておりました。
八王子みなみ野CRCの新設は、前身であるみなみ野ハートクリニックのこの部門を発展・独立させたものがベースとなっております。
以下の疾患が、心臓リハビリテーションの保険適応となっています。
特に年齢制限などはありません。
※疾患によっては、条件があるものがあります。
心臓リハビリテーションの効果は、以下のものが挙げられます。
1 運動することによって、酸素の取り込みがよくなる。
2 運動能力が増加することによって、楽に動けるようになる。
3 気持ちよい汗をかくことによって、不安やうつから解放される。
4 狭心症や心不全の症状が軽くなる。
5 生活習慣病の危険因子(血圧、血糖値など)がよくなる。
6 血管内皮機能(血管が自分で広がる能力)がよくなり血液の循環がよくなる。
7 自律神経の働きがよくなり、血圧や脈拍が安定し、不整脈が起きにくくなる。
8 血液凝固因子が安定し、血栓ができにくくなる。
9 心筋梗塞の再発や突然死が減り、死亡率が減少する(3年間で約25%低下)。
10 心不全の死亡率や再入院率が減少する。心臓リハビリテーションは死亡率を56%減少させ、再発を28%減少する、とされています。